フィリピンの水あたり — 予防と症状別の対処

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フィリピンに着いて数日のうちにお腹をこわすのは、珍しいことではありません。よく水あたりと呼ばれますが、正確には水が変わったからというより、ふだん接していない細菌やその毒素が体に入って起きる胃腸の反応に近いものです。国際的には旅行者下痢症(traveler's diarrhea)と呼ばれる範囲に入ります。
ほとんどは数日のうちに自然に治まります。 ただ、その数日で予定がまるごと飛び、脱水がひどくなると状況が悪くなることもあります。そこでこの記事は二部構成です。そもそもかかりにくくする方法と、かかったら何から始めるか。
⚠️ 最初にお断りしておきます。 この記事は医学的な診断や処方ではありません。薬の名前や飲み方をすすめることはせず、症状を自分で判定する基準を示すものでもありません。具合が悪い、または良くならない場合は、医療機関を受診するのが原則です。
なぜ起きるのか — 経路はたいてい水、氷、加熱していないもの
原因が分かれば、避けるポイントも見えてきます。実際に問題になる経路はそれほど多くありません。
① 水道水。 フィリピンの水道水は飲用にしないのが一般的です。配管が古かったり給水の途中で汚れが混じったりすることがあるため、現地の人も飲み水は別に買っています。歯みがきのすすぎに使う水まで気をつける人もいます。 水事情についてはフィリピンの飲み水にまとめています。
② 氷。 ここが見落としやすい穴です。ミネラルウォーターを買って飲んでいても、氷入りの飲み物を飲んでは意味がありません。ただ、製氷工場で作られた氷を使う店は増えていて、モールやチェーン店はおおむね安心できるほうです。問題になるのは出どころの分からない氷です。
③ 洗ってそのまま出す生野菜、皮ごと食べる果物。 野菜を洗った水が水道水なら、結局同じことです。そのため旅の序盤は、加熱した料理と自分で皮をむいて食べる果物のほうが安全です。
④ 常温に長く置かれた料理。 暑い気候で、作り置きして並べてある料理は、時間がたつほどリスクが上がります。屋台料理そのものが問題というより、回転の遅い料理が問題です。
⑤ 手。 意外と大きな要因です。現金を触り、手すりをつかみ、その手で食べ物をつまみます。フィリピンには手で食べる食文化もあるので、なおさらです。
⑥ そして実は — 体調。 長時間の移動、睡眠不足、急な食生活の変化、冷房と暑さの繰り返し。到着後の1週目は体がいちばん弱っている時期です。同じものを食べても、最初の週にお腹をこわしやすいのはこのためです。
予防 — 順番を決めておけば続けられます
全部に気をつけようとすると、何も食べられなくなります。効果の大きいものからいくつかだけ習慣にするほうが現実的です。
1位 · 飲む水は買った水で。
ミネラルウォーターを買うか、浄水器の水を使います。歯みがきにもボトルの水を使えばより確実です。
2位 · 氷は店を見て決める。
モール・チェーン店・ホテルはおおむね大丈夫です。屋台や小さな店で出どころが分からなければ、「氷なしで(no ice)」と伝えれば済みます。
3位 · 手洗いと手指消毒。
食事の前に洗います。洗う場所がないときに備えて、小さな手指消毒剤をバッグにひとつ入れておくと、実際によく使います。
4位 · 最初の1週間は加熱したもの中心に。
作りたてで熱いまま出てくる料理がいちばん安全です。生野菜のサラダ、皮ごと食べる果物、加熱が不十分な魚介類は、体が慣れてからにしましょう。
5位 · 回転の速い店を選ぶ。
客が多く、料理が次々に新しく出ていく店が有利です。長く並べられているように見えるものは避けます。
6位 · 初日に無理な予定を入れない。
疲れているほどお腹をこわしやすくなります。到着初日は軽めにするほうがいいでしょう。
| 比較的安全なもの | 序盤は後回しにしたほうがよいもの |
|---|---|
| 作りたての熱い料理 | 常温で長く並べられた料理 |
| ボトル入りの水・飲み物 | 出どころ不明の氷、水道水 |
| 自分で皮をむいて食べる果物 | カットして売られている果物、生野菜 |
| よく火が通った肉・魚 | 加熱不十分な魚介類、刺身 |
| 回転の速い食堂 | 客のいない店の作り置き |
果物の選び方と下ごしらえのコツはフィリピンの果物の買い方にあります。
症状が出たら — 順番どおりに
何かおかしいというサインが出たら、判断よりも順番が大切です。
ステップ1 · 水分と電解質の補給が最優先です。
下痢で失われるのは水だけでなく、塩分と糖分もです。水だけを飲み続けると、かえって足りなくなるものが出てきます。現地の薬局には経口補水塩(ORS、Oral Rehydration Salts)がよく置いてあります。水に溶かして飲む粉末で、こういうときに真っ先に探すものです。少しずつこまめに飲むほうが、一度にたくさん飲むよりいいとされています。
ステップ2 · 胃腸を休めます。
脂っこいもの、辛いもの、乳製品、お酒、カフェインは、回復するまで控えるほうがいいでしょう。食べられそうなら、おかゆ・バナナ・トースト・白いご飯のように負担の少ないものから少しずつ始めます。何も食べられないなら、無理に食べるより水分を保つほうが先です。
ステップ3 · 休みます。
脱水状態で暑い日に外を歩き回ると、状況が悪くなります。その日の予定はあきらめるほうが、結果的に得です。
ステップ4 · 状態を記録します。
いつ始まったか、熱はあるか、1日に何回か、何を食べたか。病院に行くことになったら、この情報が診察の半分です。
薬はどうするか
ここは慎重に書きます。どの薬をいつ飲むべきかは言いません。 ただ、知っておきたい仕組みはあります。
- フィリピンには薬局(pharmacy/botika)がモールや街中のあちこちにあります。大手チェーンは遅くまで開いていて、モールの中にも入っています。
- 薬剤師が常駐していて相談に乗ってくれます。症状を説明すれば、何が買えるか案内してもらえます。
- 薬の中には処方が必要なものがあります。特に抗生物質の類は薬局で自由に買えるものではなく、自己判断で飲んではいけない領域です。
- 下痢を無理に止める薬がいつも良いとは限りません。 熱がある場合や血便がある場合のように、使ってはいけない状況があります。だからこの判断は薬剤師や医師に任せるのが正解です。
日本から持って行くと便利なものは、ふだん自分に合っている常備薬くらいです。使い慣れた薬がひとつあれば、知らない土地で選ぶ負担が減ります。ただし、どの薬が自分に合うかは、出発前に医師や薬剤師に相談してください。 薬の持ち込みのルールも、出発前に確認しておくと安心です。
薬局では次のような英語表現が実際に使えます。
| 伝えたいこと | 使える表現 |
|---|---|
| 下痢をしています | I have diarrhea. |
| お腹が痛いです | I have stomach pain. |
| 熱があります | I have a fever. |
| 昨日からです | It started yesterday. |
| 経口補水塩はありますか | Do you have oral rehydration salts? |
こんなときは病院へ — 先延ばしにしてはいけないサイン
ほとんどは数日で良くなりますが、待ってはいけない状況があります。次に当てはまるなら、自分での対処を続けず受診してください。
- 高熱を伴うとき
- 便に血が混じる、または黒いとき
- 脱水のサインが見えるとき — 尿がほとんど出ない、またはとても濃い、口がずっと渇く、めまいがする、立ち上がるとふらつく
- 水さえ飲み込めず吐き続けるとき
- 強い腹痛が一か所に集中して続くとき
- 数日たっても良くならない、またはかえって悪化するとき
- 子ども・高齢者・持病のある人 — 上の基準より早めに受診するほうが安全です
フィリピンの都市部には私立病院があり、外国人の診療に慣れているところも多くあります。救急のときの番号と連絡先はフィリピンの緊急連絡先にまとめています。
海外旅行保険を確認しておきましょう。 治療費をその場で払い、あとで請求する仕組みが一般的なので、領収書と診断書を必ず受け取っておく必要があります。クレジットカード付帯の保険を使う場合も含め、補償の範囲・条件・手続きは保険ごとに違うので、加入している保険の約款を直接確認してください。
長期滞在なら管理の仕方が変わります
数日の旅行なら気をつけるだけで乗り切れますが、何か月も暮らすとなると、毎食警戒しながら過ごすことはできません。 考え方が変わります。
- 家で使う水を決めます。 ウォーターステーションでボトルを詰め替えて使う方法が一般的で、費用も安く済みます。
- よく行く食堂をいくつか作ります。 一度お腹をこわした店を避けるより、大丈夫だった店を繰り返し使うほうが実際的です。
- 体は少しずつ慣れていきます。 最初の2〜3週間がいちばん多く、その後は減ることが多いです。ただし慣れたと油断すると、またかかります。
- 非常用のORSを家に何袋か置いておきます。 夜に始まると、薬局を探しに出るのは大変です。
- 手洗いの習慣ひとつが、長い目で見ていちばん効きます。
よくある質問
Q. 水あたりは誰でもなりますか?
いいえ。何の問題もなく過ごす人も多くいます。ただ到着後の1週目に集中する傾向があるので、その時期だけ気をつけても確率はかなり下がります。
Q. 屋台の料理はまったく食べないほうがいいですか?
そこまで考える必要はありません。回転が速く、その場で加熱して熱いまま出てくるものならリスクは低めです。問題は作り置きして常温に置かれた料理です。
Q. 氷は必ず抜くべきですか?
モール・チェーン店・ホテルの氷はおおむね大丈夫なほうです。出どころが分からない店でだけ抜けば十分です。
Q. 下痢止めを日本から持って行けばいいですか?
薬を常備するかどうかは個人の判断ですが、どの薬が自分に合うかは出発前に医師や薬剤師に相談してください。 そして熱や血便があるなら、薬でしのがずに受診する必要があります。
Q. 何日で治りますか?
たいてい数日で治まることが多いですが、人によって違います。日数を決めて我慢するより、上の「病院へ」のサインに当てはまるかどうかを基準にしてください。
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まとめるとこうです。水・氷・加熱していないもの・手、この四つを管理するだけで、フィリピンでの水あたりはかなり防げます。それでもかかったら、まず水分と電解質の補給、胃腸を休めながら様子を見ます。
そしていちばん大切なこと — 熱、血便、脱水のサイン、そして良くならない状態。 このうちひとつでも当てはまれば、自分で判断せず病院で診察を受けてください。
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